営業管理、会計、チャット、問い合わせ管理など、業務ごとに便利なクラウドサービス(SaaS)を使うほど、サービス間でデータを手で転記する作業が増えていきます。この手間を減らす手段として注目されているのが、iPaaS(アイパース)です。本記事では、iPaaSでできること、APIやRPAとの違い、向いているケース、運用での注意点を解説します。システム同士をつなぐ考え方は、API連携でできること:システム間をつなぐメリットと注意点もあわせてご覧ください。
iPaaSとは
iPaaSは「Integration Platform as a Service」の略で、複数のクラウドサービスやシステムをつなぎ、データの連携や、業務の自動化を実現するクラウドサービスです。画面上で、条件と動作を設定するだけで、サービス間の連携を作れるため、プログラミングの知識が少なくても使えるのが特徴です。代表的なサービスには、Zapier、Make、Microsoft Power Automateなどがあります。
仕組みと、できること
基本的な仕組みは、「きっかけ(トリガー)が起きたら、決めた動作(アクション)を実行する」というものです。たとえば、次のような自動化が考えられます。
- Webフォームに問い合わせが入ったら、顧客管理システムに自動で登録し、チャットに通知する
- 受注の情報が登録されたら、請求書の作成用データを、自動で作成する
- メールに添付された書類を、指定のフォルダに自動で保存する
- 予約が入ったら、カレンダーに自動で予定を登録する
- スプレッドシートの更新内容を、定期的に別のシステムへ反映する
このような、サービス間の「転記」や「通知」を自動化することで、入力ミスや、対応の漏れを減らせます。
APIによる個別開発・RPAとの違い
- APIによる個別開発:プログラムを書いて、サービス間を直接つなぐ方法です。自由度が高く、大量のデータや、複雑な処理にも対応できますが、開発の費用と期間がかかります。API連携の考え方は、API連携でできること:システム間をつなぐメリットと注意点で解説しています。
- iPaaS:あらかじめ用意された部品(コネクタ)を使って、画面上の設定で連携を作る方法です。短期間で、低い費用で始められますが、対応しているサービスや、できる処理の範囲は限られます。
- RPA:人がパソコンで行う画面の操作を、ロボットが代わりに行う方法です。APIを持たない古いシステムにも使えますが、画面の変更に弱い傾向があります。判断の基準は、RPAとシステム化、どちらを選ぶ?業務自動化の判断基準で解説しています。
標準的なSaaS同士をつなぐのであれば、まずiPaaSを検討し、対応できない部分を個別開発やRPAで補うという考え方が、現実的です。
向いているケース・向かないケース
向いているケース
- 人気のある、標準的なSaaS同士を連携したい
- 処理するデータ量が、それほど多くない
- まず小さく試して、効果を確かめたい
- 情報システムの担当者が少なく、開発に人手をかけられない
向かないケース
- 大量のデータを、高速かつ確実に処理する必要がある
- 処理の内容が複雑で、細かなデータ変換や、例外への対応が多い
- 連携したい独自の基幹システムが、iPaaSに対応していない
- 止まると業務への影響が非常に大きく、高い信頼性が求められる
このような場合は、個別開発による連携を検討したほうが、長い目で見て安定します。
運用するときの注意点
エラー時の通知と再実行の仕組みを決める
連携は、相手のサービスの不具合や、データの不備で、失敗することがあります。失敗に気づけないまま放置すると、データの抜け漏れが発生します。エラーが起きた際に、誰に通知され、どう再実行するのかを、決めておきます。
属人化を防ぐ
iPaaSは、手軽に作れるため、担当者が一人で作り、他の人には内容が分からなくなりがちです。作った自動化の目的、仕組み、担当者を、一覧で管理しておきましょう。担当者が異動や退職をしても、引き継げるようにします。ドキュメントの重要性は、システムのドキュメント整備を怠るとどうなるかで解説しています。
認証情報と権限を適切に管理する
iPaaSは、複数のサービスのアカウントに接続するため、管理が甘いと、情報漏えいの原因になります。個人のアカウントではなく、連携専用のアカウントを使い、必要最小限の権限だけを与えるようにします。
料金体系と、サービスの仕様変更を確認する
多くのiPaaSは、実行した回数に応じて料金が変わります。想定より実行回数が増えて、費用が膨らまないか、事前に見積もっておきましょう。また、連携先のサービスの仕様が変わると、動かなくなることがあるため、定期的な動作の確認も必要です。
よくある質問
Q. プログラミングの知識がなくても、使えますか?
A. 基本的な連携であれば、プログラミングの知識がなくても作れます。ただし、データの構造や、条件分岐の考え方を理解している必要があり、処理が複雑になると、設定が難しくなります。難しい場合は、専門家に相談したほうが、結果的に早く済むことがあります。
Q. 無料のプランで、業務に使っても問題ありませんか?
A. 無料のプランは、実行回数や、連携できる数に制限があることが一般的です。業務の中心で使う場合は、制限や、サポートの内容、データの取り扱いの条件を確認したうえで、有料のプランも含めて検討しましょう。
まとめ
iPaaSは、複数のクラウドサービスを、画面上の設定でつないで自動化できる仕組みです。標準的なSaaS同士の連携を、短期間・低コストで始められる一方、大量データや複雑な処理には向きません。エラー時の対応、属人化の防止、権限の管理を決めたうえで、まずは小さな連携から試してみましょう。